ポンプの基礎知識と種類を徹底解説
ポンプの基礎知識と種類を徹底解説【第一部】
■ ポンプとは
ポンプとは、モーターやエンジンなどの動力から機械的なエネルギーを受け取り、それを液体や気体を含む流体のエネルギーに変換する機械のことです。低い場所にある液体を高い場所へくみ上げたり、圧力の低い液体を圧力の高い容器へ送り込んだりする役割を担っています。工場の生産ラインや上下水道、化学プラント、食品製造など、私たちの生活やものづくりのあらゆる場面で、目には見えないところから液体や気体の流れを支えている存在です。
■ ポンプ仕組み
ポンプの基本的な仕組みは、「流体にエネルギーを与えて圧力差や運動エネルギーを生み出し、その差によって流体を移動させる」という点に集約されます。方式は大きく分けて、羽根車を回転させて遠心力で流体を送り出す「ターボ形」と、ピストンやダイヤフラム、ロータなどで一定の空間(容積)をつくり、その容積の変化によって流体を吸い込み・吐き出す「容積形」に分類されます。ターボ形は連続적でなめらかな流れを生み出しやすく、容積形は圧力や流量を精密にコントロールしやすいという特徴があります。どちらの方式を選ぶかによって、送れる流体の粘度や圧力、流量の精度が大きく変わってきます。

■ どのような種類がある?
ポンプは駆動方式や構造によって非常に多くの種類に分かれます。水のようにさらさらとした液体を大量に送るのに向いたものもあれば、粘度の高いペースト状の液体や、固形物を含んだスラリーを傷めずに移送できるものもあります。用途に応じて「どれだけ正確な流量が必要か」「どれくらいの圧力が必要か」「送りたい液体の性質はどうか」といった条件を整理し、最適な種類を選定することが重要です。
■ 種類一覧
代表的なポンプの種類としては、以下のようなものが挙げられます。
・定量ポンプ(ダイヤフラム式・プランジャー式など、一定量を正確に送るポンプの総称)
・モーノポンプ(一軸偏心ねじポンプ)
・遠心ポンプ(渦巻ポンプなど、羽根車の遠心力を利用するポンプ)
・ダイヤフラムポンプ
・プランジャーポンプ
・歯車ポンプ
・ベーンポンプ
・蠕動(ぜんどう)ポンプ(チューブポンプ・ホースポンプ)
・軸流ポンプ・斜流ポンプ
・水中ポンプ(水中モーターポンプ)
・自吸式ポンプ
・マグネットポンプ(キャンドモーターポンプ)
このほかにも、うず流(カスケード)ポンプや真空ポンプなど、特殊な用途に特化したポンプも数多く存在します。以下では、それぞれの特徴を詳しく見ていきます。
■ 定量ポンプ
定量ポンプは、往復運動などによって一定容積の液体を送ることに優れた容積式のポンプです。少ない量の液体でも適切な分量を送り込むことができるため、主に飲料水の浄水処理や滅菌作業での薬剤の投入など、正確な注入が必要な場所で使用されることが多く、食品への添加物の投入や排水への調整剤の注入などでも利用されています。駆動方式にもいくつかの種類があり、電磁石を動力とするソレノイド駆動式や、モーターを動力とするモーター駆動式などが代表的です(参照:モノタロウ「定量ポンプ」 https://www.monotaro.com/s/c-61571/)。少量・微量をぶれなく送り続けたいという場面で強みを発揮するポンプです。
弊社・櫻製作所でも「SSSポンプ」という定量ポンプを製造しており、吐出精度±0.5%以内という高い再現性を持ち、低粘度0.2mPa・sから高粘度50,000mPa・sまで、また高温(~320℃)・低温(~-180℃)の液体にも対応できる仕様となっています。全密閉構造のため長期間の連続運転や屋外設置にも適しており、接液部の材質もステンレスやハステロイ、チタン、テフロンなど、用途に応じて幅広く選択可能です。スラリーや危険液に対応したダイヤフラム式・ダブルシール式もラインアップしており、化学・食品・水処理・液化ガス・発電プラント・製紙パルプなど、幅広い分野で採用されています(参照:株式会社櫻製作所「定量ポンプ」 https://www.sakuraseisakusho.co.jp/scraping/meteringpump/)。
■ モーノポンプ
モーノポンプは、回転容積式に分類される一軸偏心ねじポンプの一種です。水のような液体から高粘度の液体、高濃度のスラリーまで、無脈動かつ定量で高精度に移送できることが大きな特徴です。ローターとステーターという特殊な構造の部品を組み合わせることで、内部に連続したキャビティ(空間)をつくり出し、吸い込まれた液体をキャビティ内に閉じ込めたまま吐出側へと移送します。キャビティの断面はどの瞬間でも一定であるため、吐出量が常に一定で脈動も生じません(参照:一般社団法人日本化学機械学会「機関誌」2024年10月号 https://jcmanet.or.jp/bunken/kikanshi/2024/10/091.pdf)。開発元である兵神装備株式会社によれば、低粘度から高粘度・高濃度、気泡や固形物、繊維を含む液体、さらには粉体まで幅広い流体に対応でき、回転数の制御によって流量調整も容易に行えるといいます(参照:兵神装備株式会社「モーノポンプ」 https://www.mohno-pump.co.jp/products/index.html)。液体中の固形物を潰しにくく、粘度の高い液体も安定して送れるため、食品や化学、環境分野など幅広い現場で採用されています。
■ 遠心ポンプ
遠心ポンプは、ケーシングの中で羽根車(インペラ)を高速回転させ、その遠心力によって液体にエネルギーを与えるターボ形ポンプの代表格です。羽根車から吐出される流れが主として主軸に垂直な平面内にあるものが遠心ポンプであり、羽根車の外周に案内羽根を有する場合と有しない場合とで、ディフューザポンプ・うず巻ポンプなどに分類されます(参照:機械工学便覧の解説 https://www.eng-book.com/sample/pdf/P500.pdf)。国内大手メーカーの荏原製作所も、給水・冷温水循環・工業用水など幅広い用途向けに片吸込渦巻ポンプなどの遠心ポンプを製品化しています(参照:株式会社荏原製作所 公式サイト https://www.ebara.com/jp-ja/)。構造がシンプルで大流量を扱いやすく、比較的メンテナンスしやすいことから、上下水道や冷却水の循環など、大量の液体を連続的に送りたい用途で広く使われています。一方で、脈動の少なさや微量域での定量性は、後述する定量ポンプ系統に軍配が上がります。
■ ダイヤフラムポンプ
ダイヤフラムポンプは、ゴムや樹脂でできた膜(ダイヤフラム)を往復させることで容積を変化させ、その変化を利用して流体を吸い込み・吐き出す容積形ポンプです。ダイアフラムの容積変化で流体を輸送するため、液体を撹拌せずに定容積の輸送が可能で、薬品注入などによく用いられます(参照:ウォーターポンプの解説 https://www.weblio.jp/content/%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%97)。駆動部と液体が接する部分がダイヤフラムによって隔てられているため、摺動部からの液漏れが起きにくく、薬液や腐食性のある液体を扱う現場でも信頼性の高い選択肢となります。
■ プランジャーポンプ
プランジャーポンプは、シリンダー内をプランジャー(棒状のピストン)が往復することで高い圧力を生み出す容積形ポンプです。高圧洗浄機や昇圧装置、ボイラーへの薬液注入などに用いられており、回転式のポンプと比較して高効率・高耐久性であることが特徴として挙げられています(参照:株式会社イワキ「高圧プランジャーポンプ RO/MPシリーズ」 https://pr.mono.ipros.com/iwakipumps/product/detail/2000429187/)。数百キログラムから数十メガパスカル級の高圧を安定してつくり出せるため、洗浄・逆浸透膜による水処理・高圧噴射といった、圧力そのものが価値を生む用途で選ばれています。
■ 歯車ポンプ
歯車ポンプは、ハウジングの中で噛み合う2つの歯車を回転させ、歯と歯の間にできる空間で液体を閉じ込めて入口から出口へ運ぶ容積形ポンプです。液体は歯車の歯の間の空間に取り込まれたまま吸込口から吐出口まで運ばれ、出口側で歯車が噛み合う際に押し出されるようにして加圧・吐出されます(参照:特許庁公開情報 JPS61223280A https://patents.google.com/patent/JPS61223280A/ja)。構造がシンプルで小型化しやすく、油圧回路の作動油や潤滑油など、比較的粘度の高い液体を安定して送る用途で広く使われています。
■ ベーンポンプ
ベーンポンプは、円筒状のケーシングの中に偏心して取り付けられたローター(回転子)に、複数枚の板状のベーン(羽根)を組み込んだ構造のポンプです。ケーシングに偏心して取り付けられた回転子の可動ベーンで液体を輸送する仕組みで、撹拌による発泡を嫌うシステムに適しており、分解清掃も容易です。自動車の油圧式パワーステアリング用ポンプとして広く採用されているほか、構造がシンプルで分解・清掃がしやすいことから、比較的低粘度の液体を扱う用途にも向いています。
■ 蠕動ポンプ
蠕動(ぜんどう)ポンプは、柔らかいチューブやホースを外側からローラーやシューでしごくことで、内部の液体を押し出すように送るポンプです。液体がポンプの駆動部に直接触れることなく、チューブの内側だけを流れるため、薬液や血液など、液体を汚染させたくない場面で安全に使いやすいという特徴があります(参照:スイッチサイエンス「液体用蠕動ポンプ」 https://www.switch-science.com/catalog/3621/)。医薬品・医療分野での精密な投薬や、食品製造、コンクリートの圧送などにも用いられており、チューブを交換するだけで接液部を簡単に清潔な状態へ戻せる点も強みです。
■ 軸流ポンプ・斜流ポンプ
軸流ポンプと斜流ポンプは、いずれも羽根車(プロペラ)を使って液体を送るターボ形ポンプですが、遠心ポンプとは液体の流れる方向が異なります。軸流ポンプは、液体が羽根車の回転軸とほぼ平行な方向に流れる構造で、低い揚程で大量の液体を送ることに適しています。斜流ポンプは、遠心ポンプ(渦巻ポンプ)と軸流ポンプの中間的な性質を持つポンプで、軸流ポンプに比べて高い揚程に対応でき、キャビテーション発生の危険も少ないという特徴があります(参照:東京大学学術機関リポジトリ「斜流ポンプ」 https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/23454/files/sk011007007.pdf)。いずれも、河川やダムの取水・排水、農業用のかんがいなど、大量の水を扱う設備で多く採用されています。
■ 水中ポンプ
水中ポンプ(水中モーターポンプ)は、モーターとポンプ本体を一体化し、液体の中に沈めた状態で運転する形式のポンプです。羽根車やモーターが液中にあるため、呼び水(配管内を液体で満たす作業)が不要で、簡単に始動できることが特徴のひとつです(参照:山梨県「第6章 用排水ポンプ設備」 https://www.pref.yamanashi.jp/documents/3533/sisetu6.pdf)。地上に大がかりな設置スペースを必要としないことから、雨水や汚水の排水機場、建設工事現場での仮設排水、井戸からの揚水など、幅広い場面で利用されています。
■ マグネットポンプ
マグネットポンプ(キャンドモーターポンプ)は、モーターの回転をシャフトで直接伝えるのではなく、磁力(マグネットカップリング)を介して非接触で伝える構造のポンプです。駆動部と液体が接する部分を隔壁で完全に分離できるため、シール部分からの液漏れが原理的に発生しないことが最大の特徴です(参照:日本原子力研究開発機構「キャンドローターポンプ」 https://atomica.jaea.go.jp/data/dic_download/dic_pdf_zip/dic_detail_827.pdf.zip)。腐食性の薬液や、漏洩を絶対に避けたい薬品・純水などを扱う半導体・化学・医療分野で、信頼性の高い選択肢として使われています。

■ 自吸式ポンプ
自吸式ポンプは、本来は呼び水(配管とポンプ内部を液体で満たす作業)が必要な遠心ポンプなどに、自力で空気を排出して吸込みを開始できる機構を組み込んだポンプです。ポンプ内部に空気と液体を一緒に取り込みながら循環させることで気体を排出し、配管内を徐々に液体で満たしていく仕組みになっています。ただし、この自吸のための循環動作を伴う分、標準的な遠心ポンプに比べて流体効率がやや低くなりやすい点には注意が必要です(参照:市場調査レポート「自吸式遠心ポンプ市場」 https://www.gii.co.jp/report/tsci1965420-self-priming-centrifugal-pump-market-global.html)。設置のたびに手動で呼び水を行う手間を省けるため、建設現場での仮設排水や、上下水道の取水・排水など、頻繁に着脱・移動が発生する現場で重宝されています。
なお、ここまでにご紹介した以外にも、多数の小さな溝を持つ円盤状の羽根を高速回転させて小流量・高圧を得る「うず流(カスケード)ポンプ」や、液体ではなく気体を排出して圧力を下げる「真空ポンプ」など、特定の目的に特化したポンプも存在します。実際の選定にあたっては、送りたい流体の性質や必要な性能条件を整理したうえで、こうした多様な選択肢の中から最適な一台を検討することをおすすめします。
■ ポンプの大きさ
ポンプの大きさは、口径数ミリの実験・研究用の小型ポンプから、上下水道の排水機場で使われる口径1000ミリを超える大型ポンプまで、非常に幅広く存在します。小型のものは実験室での微量な薬液注入や、家庭用の給水・エアポンプなどに使われ、大型のものは河川の排水機場や大規模プラントでの大流量搬送に使われます。選定にあたっては、単純な外形寸法だけでなく、必要な吐出量(流量)、揚程(どれだけ高くまたは遠くへ送れるか)、設置スペース、配管径との整合性なども合わせて検討する必要があります。
ポンプの選び方・使われ方を徹底解説【第二部】
■ 各ポンプの説明
第一部でご紹介した定量ポンプ、モーノポンプ、遠心ポンプ、ダイヤフラムポンプ、プランジャーポンプ、歯車ポンプ、ベーンポンプ、蠕動ポンプ、軸流・斜流ポンプ、水中ポンプ、マグネットポンプ、自吸式ポンプは、それぞれ得意な領域が異なります。定量ポンプとダイヤフラムポンプは微量の液体を正確に注入したい場面に強く、モーノポンプや蠕動ポンプは高粘度液や固形物を含む液体をやさしく無脈動で送りたい場面に強みを発揮します。遠心ポンプ・軸流ポンプ・斜流ポンプ・水中ポンプは大流量を連続的に送ることが得意で、プランジャーポンプは高い圧力をつくり出すことに特化しています。歯車ポンプやベーンポンプは油圧回路など粘度の高い液体の循環に、マグネットポンプや自吸式ポンプは液漏れの防止や設置の手軽さといった、性能以外の使い勝手の面で選ばれることが多いポンプです。
「正確さ」「粘度への対応力」「流量」「圧力」「漏れの許容度」「設置・操作の手軽さ」のどれを優先したいかによって、選ぶべきポンプの方向性が見えてきます。複数の条件が絡み合う場合は、実際の液性状(粘度・固形物の有無・腐食性など)と、必要な流量・圧力を整理したうえで、メーカーや専門商社に相談しながら選定するのが安全です。
■ どのような環境で作られる?
ポンプは精密な機械であるため、多くはクリーンな環境が保たれた工場内で、鋳造・機械加工・組立・検査といった工程を経て製造されます。ケーシングやローターなどの主要部品は鋳造や機械加工によってつくられ、その後、寸法精度や表面粗さを確認しながら組み立てられます。日本国内では、小形の渦巻ポンプについてJIS B8313(渦巻ポンプ及び渦流ポンプ)などの日本産業規格が制定されており、大手メーカーはこうした規格に準拠した設計・製造・検査体制を整えています。特に食品用・医薬品用のポンプでは、接液部の素材や仕上げに厳しい衛生基準が求められるため、専用の清浄度が管理されたラインで製造されることもあります。組み立て後には、実際に水や試験液を流して性能検査を行い、規定の流量・圧力・振動値などをクリアしたものだけが出荷される、という流れが一般的です。
■ 各環境での説明
一般工業用のポンプは、比較的標準的な工場環境で製造されますが、腐食性のある薬液や高濃度の粉体を扱うポンプでは、接液部にステンレス鋼や樹脂ライニングなどの耐食素材が使われ、それに応じた加工・溶接技術が必要になります。実際、弊社・櫻製作所の定量ポンプ「SSSポンプ」でも、送る液体の種類に応じてステンレス、ハステロイ、チタン、WC合金、テフロンなど多様な接液部材質を使い分けており、金属ナトリウムや溶融硫黄のような特殊な流体を扱う製品も用意しています(参照:株式会社櫻製作所「定量ポンプ」 https://www.sakuraseisakusho.co.jp/scraping/meteringpump/)。食品・医薬品用途では、微生物汚染を防ぐための洗浄性(分解のしやすさ、パーツの少なさ)が重視され、素材選定の段階から異物混入対策が組み込まれます。屋外の排水機場などで使われる大型ポンプは、雨風や湿気にさらされる環境を想定し、防錆・防水性能を高めた仕様で製造されるなど、設置される先の環境に応じて製造段階から異なる工夫が凝らされています。
■ どのような業界で使われる?
ポンプは、上下水道・河川管理といったインフラ分野から、化学・石油、食品・飲料、医薬品、半導体、自動車、電機、製紙・パルプ、建設、農業まで、非常に幅広い業界で使われています。国内大手の荏原製作所は、清水用・海水温泉用・スラリー用・無漏洩用・立軸用・無閉塞用など、業界・用途別に多彩なポンプをラインアップし、業界ごとの選定概要をカタログでまとめています(参照:株式会社荏原製作所 公式サイト https://www.ebara.com/jp-ja/)。モーノポンプを製造する兵神装備株式会社も、食品、自動車、電機、化学、製紙、土木・建設、上下水道など、高粘度液・高濃度液の移送が必要な多くの産業分野で市場を切り開いてきたとしています(参照:兵神装備株式会社「モーノポンプ」 https://www.mohno-pump.co.jp/products/index.html)。インフラ分野では雨水や汚水の排水、浄水処理での薬品注入に、化学・石油分野では反応液や原料の移送、腐食性液体の搬送に活用されます。食品・飲料分野では調味液やペースト状原料の移送、医薬品分野では微量な薬液の精密な注入に、半導体分野では超純水や薬液の供給に、それぞれポンプが重要な役割を果たしています。

■ 業界別ポンプ
業界ごとの主な選定傾向としては、次のような組み合わせがよく見られます。上下水道・排水分野では大流量に対応できる遠心ポンプや水中ポンプ、化学プラントでは耐食性を備えたダイヤフラムポンプやプランジャーポンプ、食品・化粧品分野では衛生性と高粘度対応を両立したモーノポンプ、浄水場や工場排水処理場での薬液注入には定量ポンプ、洗浄や水処理の昇圧用途には高圧プランジャーポンプが選ばれる傾向にあります。実際に弊社・櫻製作所の定量ポンプも、化学分野の高温・低温ジャケット付ポンプや金属ナトリウム送液、食品分野の乳化剤・油脂原料・卵白の送液、水処理分野の次亜塩素酸水や苛性ソーダ・PAC注入装置、発電プラントのボイラー向け薬注装置、製紙・パルプ分野の尿素水注入装置など、業界ごとに異なる仕様で採用されています(参照:株式会社櫻製作所「定量ポンプ」 https://www.sakuraseisakusho.co.jp/scraping/meteringpump/)。ただし、実際には同じ業界でも工程ごとに求められる性能が異なるため、あくまで一般的な傾向として捉え、個別の条件に合わせた選定が必要です。

■ どのような目的で使われる?
ポンプが使われる目的は、大きく「移送」「注入」「循環」「昇圧」「排水」の5つに整理できます。移送は原料や製品を別の場所へ運ぶこと、注入は薬品や添加物を正確な量だけ加えること、循環は冷却水や洗浄液を系内でぐるぐると回し続けること、昇圧は水処理や洗浄のために圧力を高めること、排水は雨水や汚水を低い場所から高い場所へくみ出すことを指します。同じ「液体を動かす」という行為でも、目的によって求められる精度や圧力、流量のバランスがまったく異なるため、目的を明確にすることがポンプ選定の第一歩になります。
■ 目的別おすすめポンプ
微量の薬品を正確に注入したい場合は定量ポンプやダイヤフラムポンプ、高粘度の原料やペーストを傷めずに移送したい場合はモーノポンプや蠕動ポンプ、大量の水を連続的に循環・排水したい場合は遠心ポンプや軸流・斜流ポンプ・水中ポンプ、高い圧力で洗浄や昇圧を行いたい場合はプランジャーポンプ、液漏れを絶対に避けたい薬液や純水の移送にはマグネットポンプが、それぞれ有力な候補となります。もちろん、これらはあくまで目安であり、実際の液体の性質(粘度・温度・腐食性・固形物の有無など)や設置条件によって最適な選択は変わってきます。迷った場合は、複数の候補を比較しながら、専門知識を持つメーカーに相談することをおすすめします。
■ 導入・設置時の注意点
ポンプを導入・設置する際は、まず送りたい液体の性質(粘度、温度、腐食性、固形物の有無)を正確に把握することが欠かせません。そのうえで、必要な流量・圧力・揚程を計算し、余裕を持った能力のポンプを選定します。設置場所については、点検・メンテナンスのためのスペースが確保できるか、振動や騒音が周囲に与える影響はどうか、配管のレイアウトが無理のない形になっているかを確認する必要があります。また、電源容量や配管材質がポンプの仕様と適合しているかどうかも、事前にしっかり確認しておきたいポイントです。特にインバーターによる回転数制御を組み込む場合は、制御盤の設置スペースや配線ルートもあわせて計画しておくと、後々の追加工事を避けられます。
■ メンテナンス
ポンプは可動部を持つ機械であるため、定期的なメンテナンスが長期の安定稼働の鍵を握ります。日常的なメンテナンスとしては、異音や異常振動がないかの確認、液漏れの有無のチェック、稼働温度や圧力が正常範囲内にあるかの確認などが挙げられます。ダイヤフラムやシール、パッキンといった消耗部品は劣化しやすいため、メーカーが推奨する交換周期を目安に、計画的に部品交換を行うことが重要です。特に薬液や高温・高圧の液体を扱うポンプでは、劣化した部品を放置すると漏れや故障につながりやすいため、早めの点検・交換を心がけることが望ましいといえます。一般財団法人省エネルギーセンターの技術講座でも指摘されているように、ポンプは設計上・計算上・製造上の余裕(マージン)を含んで選定されることが多く、実際の運転点が設計値からずれたまま長期間放置されると、効率低下や部品の早期劣化につながる場合があります(参照:一般財団法人省エネルギーセンター近畿支部 技術講座資料 https://www.eccj.or.jp/education/tech/pdf/kin/240513-0712p.pdf)。定期的にデータを測定・記録し、実際の運転状況を把握しておくことが、的確なメンテナンス計画につながります。
■ 保守
保守は、日常的なメンテナンスよりもやや広い視点で、ポンプを含む設備全体を長期にわたって安定稼働させるための取り組みを指します。定期点検のスケジュールを組み、消耗部品の在庫を管理し、故障時にすぐ対応できる体制を整えることも保守の一部です。メーカーや販売店が提供する保守契約・点検サービスを活用すれば、専門的な知識を持つ担当者による定期点検を受けられるため、自社でのメンテナンス負担を軽減しながら、突発的なトラブルのリスクを下げることができます。特に24時間稼働のプラントや、止まると大きな影響が出る排水設備などでは、こうした保守体制の整備が特に重要になります。環境省の資料でも、電動力応用設備(ポンプなど)の運転管理として、不要時の停止、稼働台数の調整、負荷の適正配分、台数制御や回転数制御による送水量・圧力の調整、電圧・電流・周波数の定期的な計測記録などが対策例として挙げられており(参照:環境省「電動力応用設備の管理標準例」 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/search/pdf/01_211.pdf)、日々の運転管理そのものが保守活動の重要な一部であることがわかります。
ポンプのコスト・歴史・購入のポイントを徹底解説【第三部】
■ ランニングコスト
ポンプのランニングコストは、主に電気代(動力費)、消耗部品の交換費用、点検・保守にかかる費用の3つで構成されます。一般財団法人省エネルギーセンターの技術講座資料によると、国内で使用されているポンプの消費電力は、国内の消費電力全体の約31〜32%を占めると報告されており、ポンプの運転効率が社会全体のエネルギーコストに与える影響は決して小さくありません(参照:一般財団法人省エネルギーセンター近畿支部 技術講座資料 https://www.eccj.or.jp/education/tech/pdf/kin/240208.pdf)。電気代はポンプの消費電力と稼働時間によって決まるため、効率の良いポンプを選ぶことや、必要以上に大きな能力のポンプを使わないことが、長期的なコスト削減につながります。
具体的な省エネ効果の例として、環境省が公開している対策事例集では、給水ポンプにインバーターを導入して回転数を制御し、流量を定格値の90%に抑制したケースにおいて、エネルギー消費量・CO2排出量・エネルギーコストのいずれも約27%削減できたという試算例が紹介されています(参照:環境省「給排水ポンプの流量・圧力の適正化」 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/search/pdf/01_173.pdf)。バルブの絞りで流量調整をしていたポンプをインバーター制御に置き換えるだけでも、大きな省エネ効果が見込めるケースがあることがわかります。ダイヤフラムやシールなどの消耗部品は使用条件によって寿命が変わるため、扱う液体の性質に合った部品材質を選ぶことで交換頻度を抑えられる場合があります。初期費用(本体価格)だけでなく、こうしたランニングコストまで含めたトータルコストで比較・検討することが、後悔のないポンプ選びにつながります。
■ 導入・活用事例
ポンプの活用事例としては、浄水場での塩素や凝集剤の注入に定量ポンプを用いるケース、食品工場でソースやペースト状の原料をラインに供給するためにモーノポンプを用いるケース、工場排水処理施設で汚水を排水機場までくみ上げるために遠心ポンプを用いるケース、洗浄設備や逆浸透膜を使った水処理設備の昇圧に高圧プランジャーポンプを用いるケースなどが挙げられます。実際の導入事例として、兵神装備株式会社ではリチウムイオン二次電池の製造工程において、電極材や溶剤含有液を高精度に移送するモーノポンプが、分散・ろ過・真空脱泡・塗工といった各工程で採用されています(参照:兵神装備株式会社 東京支店 公式サイト「電池製造業界向けモーノポンプ」 https://pr.mono.ipros.com/heishin/product/detail/2000046524/)。また下水処理場では、汚泥の移送やし渣の細断、脱水ケーキの移送、次亜塩素酸やPAC・ポリ鉄などの薬品注入にモーノポンプが活用されている事例が紹介されています(参照:兵神装備株式会社 下水道業界向け情報 https://www.mohno-pump.co.jp/event/sewer/index.html)。いずれの事例でも共通しているのは、「送りたい液体の性質」と「求める精度・流量・圧力」を明確にしたうえで、それに適したポンプの種類・仕様を選定しているという点です。自社の工程に近い事例を参考にすることで、選定の見通しが立てやすくなります。
■ ポンプ金額
ポンプの価格は、種類・容量・材質・付加機能によって大きく幅があります。小型の定量ポンプであれば数万円台から購入できるものもある一方、高精度な制御機能を備えたモデルや、耐食性の高い特殊素材を使ったモデルでは数十万円規模になることもあります。モーノポンプや大型の遠心ポンプ、プランジャーポンプなどは、口径や吐出量、圧力仕様によって価格が大きく変動し、数十万円から数百万円規模になるケースも珍しくありません。マグネットポンプのように液漏れ防止機構を備えたモデルも、標準的な遠心ポンプに比べて割高になる傾向があります。正確な金額は用途や仕様によって大きく異なるため、必要な性能条件を整理したうえで、メーカーや販売店に個別に見積もりを依頼することをおすすめします。
■ ポンプ購入時の決め手
ポンプを選ぶ際の決め手としては、まず「送りたい液体を問題なく送れるか」という基本性能の適合が挙げられます。そのうえで、精度・耐久性・省エネ性能・メンテナンスのしやすさ・アフターサービスの充実度といった要素を総合的に比較することが重要です。特に、消耗部品の入手しやすさや、故障時の対応スピードは、実際に使い始めてから効いてくるポイントであるため、価格だけでなく、サポート体制も含めて検討することをおすすめします。信頼できるメーカーや販売店から、実績や導入事例をヒアリングしながら選ぶことで、失敗の少ない導入につながります。弊社・櫻製作所の定量ポンプのように、標準品だけでなく、駆動部を大型から省スペース型まで用意し、接液部材質を用途に応じて選べるオーダーメイド対応をしているメーカーもあるため、特殊な液体や設置条件がある場合は、そうした柔軟な対応力も選定の決め手になります(参照:株式会社櫻製作所「定量ポンプ」 https://www.sakuraseisakusho.co.jp/scraping/meteringpump/)。
■ ポンプ使用時のオペレーション
ポンプを実際に運転する際は、始動前に配管内に空気が残っていないか(呼び水が必要な機種では呼び水が適切に行われているか)を確認し、バルブの開閉状態が正しいかをチェックすることが基本になります。運転開始後は、圧力計や流量計の数値、異音・異常振動の有無を定期的に確認し、異常が見られた場合はすぐに停止して点検する体制を整えておくことが大切です。環境省の資料でも、電動力応用設備の運転管理として、配電元電圧・電流・周波数の計測記録が推奨されており(参照:環境省「電動力応用設備の管理標準例」 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/search/pdf/01_211.pdf)、数値の記録を習慣化しておくことで、異常の早期発見につながります。また、長期間停止させる場合は、内部に残った液体を適切に抜き取り、乾燥・洗浄しておくことで、次回起動時のトラブルを防ぐことができます。オペレーションマニュアルに沿った正しい操作手順を現場で徹底することが、安全かつ安定した運転の基本です。
■ ポンプの歴史
ポンプの歴史は非常に古く、紀元前にまでさかのぼるとされています。紀元前3世紀ごろ、古代ギリシャの発明家クテシビオスが、ピストン・シリンダー・弁を備えた圧力ポンプをつくったことが知られており、この技術は弟子のヘロンによって改良され、後の消火ポンプの原型になったといわれています。同じく紀元前3世紀ごろには、古代ギリシャの科学者アルキメデスが、船に溜まった水を排出するために円筒内にらせん状の板を設けたポンプ(アルキメディアン・スクリューポンプ)を考案したとされています。時代が進んで16世紀には、ドイツの学者アグリコラの著書『デ・レ・メタリカ』に、鉱山排水用の3段ピストンポンプが記録されており、水車を動力として約60メートルの深さから地下水をくみ上げていたことがわかります(参照:kotobank「ポンプ」〈日本大百科全書〉https://kotobank.jp/word/%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%97)。その後、1588年にイタリアのラメリがロータリーポンプを、1593年にフランスのセルビエールが歯車ポンプを、1712年にイギリスのニューコメンが蒸気機関で駆動するピストンポンプを発明するなど、産業の発展とともにポンプも進化を続けてきました。1818年にはアメリカでマッコンティによって遠心ポンプが開発され、それ以降、大型化・高性能化が進んでいったとされています(参照:同上)。
日本国内でも、江戸時代には「龍吐水(りゅうどすい)」と呼ばれる手動式の放水器具が使われており、これが国内における消防ポンプの源流のひとつとされています。龍吐水がいつごろ発明されたのかははっきりしていませんが、一説には享保年間(1716〜36年)にオランダから渡来したとも、宝暦4年(1754年)に長崎でオランダの技術者の指導のもと造られたともいわれています(参照:東京消防庁「消防雑学事典」https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/learning/elib/qa/qa_60.html)。近代以降は、国産ポンプメーカーによる技術開発も進み、渦巻ポンプから始まり、大容量・低揚程に適した軸流ポンプ、その始動時の動力負担を解決する可動翼軸流ポンプなど、社会インフラの高度化とともに日本独自の技術も発展してきました(参照:一般社団法人日本半導体製造装置協会「SEAJ Journal」2012年3月号 https://www.seaj.or.jp/file/no137.pdf)。
■ ポンプの使用感
実際にポンプを使用している現場からは、種類によってさまざまな使用感の違いが聞かれます。定量ポンプやダイヤフラムポンプは、ストローク数設定などによって注入量を細かく調整できるため、「思った通りの量を安定して送れる」という評価を得やすい傾向にあります。モーノポンプや蠕動ポンプは脈動が少ないため、液だれや飛び散りが少なく、粘度の高い液体でも扱いやすいという声が多く聞かれます。遠心ポンプは構造がシンプルな分、扱いやすく音も比較的静かですが、微量域での細かな流量調整には不向きな面もあります。プランジャーポンプは高圧を安定して生み出せる一方、構造上どうしてもやや振動や音が出やすいため、設置場所の防振・防音対策が使用感を左右するポイントになります。マグネットポンプは液漏れの心配が少なく安心感が高い一方、磁力伝達方式のため過負荷がかかると空転(脱調)することがあり、運転状態の監視が必要になる場合もあります。
■ ポンプの耐久性
ポンプの耐久性は、素材選定と使用条件、そして日々のメンテナンスによって大きく左右されます。接液部にステンレス鋼や耐食樹脂など、扱う液体に適した素材を選ぶことで腐食や摩耗を抑えられ、結果として寿命を延ばすことができます。弊社・櫻製作所の定量ポンプ「SSSポンプ」も、全密閉構造を採用することで給油が完全に行き渡り、長期間の連続運転や屋外設置に耐える設計としています(参照:株式会社櫻製作所「定量ポンプ」 https://www.sakuraseisakusho.co.jp/scraping/meteringpump/)。一方で、規定の使用条件(粘度・温度・圧力の範囲)を超えて無理な運転を続けると、部品の劣化が早まり、故障のリスクが高まります。定期的な点検と消耗部品の計画的な交換を行うことで、ポンプ本体を長く安定して使い続けることができ、結果的にトータルコストの低減にもつながります。
■ ポンプの購入方法
ポンプの購入方法としては、大きく分けて「メーカーから直接購入する」「専門商社・代理店を通じて購入する」「ECサイトや工業用品の通販サイトで購入する」の3つのルートがあります。標準品で仕様が明確に決まっている場合は、通販サイトでの購入がスピーディーですが、特殊な液体を扱う場合や、仕様のカスタマイズが必要な場合は、メーカーや専門商社に相談しながら選定するほうが、失敗のない導入につながります。弊社・櫻製作所でも、お問い合わせフォームからのご相談やカタログダウンロード、見積依頼フォームからの個別見積りに対応しています(参照:株式会社櫻製作所「定量ポンプ」 https://www.sakuraseisakusho.co.jp/scraping/meteringpump/)。導入実績が豊富なメーカー・販売店であれば、類似の使用条件での事例をもとにアドバイスを受けられるため、初めてポンプを導入する場合は、まず相談から始めることをおすすめします。
■ ポンプ使用の際の注意点
ポンプを安全に使用するためには、いくつかの注意点があります。まず、ポンプの仕様範囲を超えた液体(規定外の粘度・温度・圧力、対応していない腐食性の液体など)を送らないことが基本です。空運転(液体が入っていない状態での運転)は、機種によっては内部部品の焼き付きや破損につながるため、機種ごとの取扱説明書で可否を確認しておく必要があります。また、薬液や高温・高圧の液体を扱う場合は、万が一の液漏れに備えて防護具の着用や周囲への飛散防止対策を行うことも重要です。日常点検を怠らず、異常を感じたら早めに運転を停止して点検することが、事故やトラブルを未然に防ぐ最も確実な方法といえます。
